坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

芸術の秋 東京篇

東京に着いて始まったばかりのブリヂストン美術館野見山暁治の回顧展を見た。彼は愛知県美術館に紫色が印象的でダイナミックな大作があって、まとめて見たいと思っていたが、加えて野見山氏が50年代パリ留学中に奥さんを癌で亡くす過程を冷酷なほどに客観して書き留めた「パリ・キュリイ病院」というS君にもらっていた本を夏に読んだばかりだった。
あまり彼の作品を知らなかったのだが、今回の展覧会を見て分かったのは、80年代後半になってから作品が「吹っ切れて」いること。若い頃から認めらていた作家だからすべて良い作品には違いないのだろうが、私が好きな作品はすべて彼が70歳近くになってからなのだ! パリ留学以来徹底した個人主義を貫き、、、というようなことが解説にあったのだが、それまでの作品には何か「日本の展覧会の絵の匂い」がする。それが日本的とも西洋的とも取れる鮮やかで強い色彩と躍動感が「老年」になって現れる。今、つまり90歳代の作品も力強い。「どうしたことだろう」といぶかしく思っていたら、何と本人が会場にいた。こんな感想(疑問?)をぶつけたら失礼だろうかと声をかけるのに躊躇していたら急にブザー音が。傍の男性にじろりと睨まれて初めて自分の携帯が鳴っていることがわかった(日本にいる時だけ持つ特別品なので意識外)。当然すぐに警備員は飛んでくるし、、、で結局作家本人に残念ながらこの不躾な質問をする機会は失してしまった。
訊かなくても分かる事は野見山氏が多くの作家のように同じ事を繰り返すことに安住しない人だということ。
レベルの差はあれ、私も頑張ろっと