坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

豊田市美術館遠征

イメージ 1豊田市美術館へは十数年前、まだ私が飛び込みで宣伝活動をするだけの元気(野心?)があった頃、その頃の学芸部長さんが会って下さると言うので行ったところ、当日朝まで雪が降り、道には雪が積もるし美術館は丘の上だしで、大変な苦労をしてたどり着いた思いた。その所為でも「ものすごく遠い」という記憶があるが、秋晴れの昨日は昔と大違いで、駅からの道は何のことはなかった。但し私の実家は名古屋の西だから、豊田駅までですでに鉄道片道1時間半はかかる結構な遠出には違いない。第一の目的は青木野枝展、加えて私の好きなトニー・クラッグ(11年2月8日参考)や草間弥生などの「オルガニック・フォーム」という所蔵作品展があり、名だたるアーティストの中にLギャラリーの小島さんのビデオもあるというのだから、遠くても行くしかないよね~。(かつコレクションの質の高さには以前も感心させられたし)

青木野枝は硬くて重い鉄という素材で軽々とした作品を作る。私が好きな日本の作家の一人だ。展覧会名にもなる「ふりそそぐものたち」は数珠が何本か天から垂れ下がったような作品で(高さ10mぐらい?)、実際バーナーで切った粗雑な縁の鉄の円板が幾つも溶接して数珠つなぎにされて立っている。溶接箇所の数は半端ではない。展覧感案内に、作家本人が行うワークショップで「溶接をする」と書いてあり、「何それ」と思っていたが「よぽど溶接好きな人だなー」と妙に納得した。最近自由に写真を撮らせてくれるヨーロッパの美術館と違い撮影禁止だったので、イメージは検索して下さい。粗雑(細部)ながらしなやか(全体)で、フランス人の私(?)にはノエという名前ゆえか(仏語でノエは「ノアの箱船」のノア)天上から神に曵かれた加護の網のようにも感じられる。パンフレットには「重量を感じさせず、上昇や生成の気韻を生じさせる」と要約されていたが、そのとおりだと思う。80年代、同じく女性彫刻家の宮脇愛子は天に描いた一筆書きのような金属ワイヤ彫刻で一世を風靡したが(パリのデファンスにもあったが、今もあるのかしら)、ヨーロッパの「我ここにあり」という重量感に対し、時の中でのうつろぎを感じさせるのは日本人、特に女性の秀でた感性だろう。溶接彫刻の外、数点の制作ヒント写真のような平面作品と、最後に巨大な石膏の作品があったが、あれは何なのかな?(ちっとも面白くなかった)

美術館テラスに出てびっくりしたのはダニエル・ビュラン Daniel Buren(例えば6/3参考)。3つ赤・黄・青の鏡のキューブのパビオン(天井無し)は内部がそれぞれの色で、4つの入り口の正面に同じ色の入り口大の壁(裏は鏡、側面にはいつものストライプ)が立つ。以前あったかなァ?(覚えがない。雪の所為か)。鏡の反射とパースペクティブは誰しも推察するところのものだが、やっぱり何やら面白い。彼のやることは単純で効果的。だからフランス国家お抱えアーティストで、大予算で同じような縞しまプロジェクトばかりの、嫌われ者(?)のビュラン氏だが、私は一目置いているのだ。ここで子供が「丸見えのカクレンボ」をしていたのがとても印象に残った。