坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

ピンポイント観光

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25(日)に個展が終わり、ほっと一息。先週は外国人特権のJRパス(所謂JR線のフリーパスで、私は日本国籍だが永住ビザ同等があるので購入可)を利用して、不思議な旅をした。名付けてピンポイント観光。

例えば金曜日の午前に神戸元町で知合いの個展を見て、天気がよかったのでちょっと散歩、そしてひかりで東京に夕方着、経産省前の反原発集会に参加。その晩 は東京の兄の家に泊まり、土曜はまた別の知合いの個展を銀座で見、友人と昼食を食べて愛知の実家に戻った。そして日曜日の朝は早く起きたので朝食抜きで名 古屋に向かう。岡山行きひかり(また「ひかり」、実はJRパスはのぞみに乗れない!)が出発直前だったので乗車、時刻表を見ると米原で金沢・富山行きの朝 一の特急しらさぎに連絡する。新幹線内の電光掲示板の天気予報では、北陸の天気が太平洋岸よりよさそうだ。これで行き先は決まった。片山津温泉

ここには現代的なコンクリート打ちっぱなしで4月にオープンしたばかりの「まちの湯」があり、気にかかっていた。2つの浴場があり男女交代制、男性が柴山潟を一望する展望のよい湯に入れるのは「偶数日」ということは既に調査済みだった。加賀温泉で下車するとバスは1時間後しかない。まあこれは行き当たり ばったりの旅だから仕方がない。列車に社内販売サービスがなかったので結局朝から何も食べていないので、ちょうどよいぐらいだった。時間潰しに入った駅前 ビルで往年の名画DVDが250円、なんでこんなところでと思いつつ、ルネ・クレール監督の「パリの屋根の下」ほかを購入。幸いにしてバスの時刻が迫りバ ス停に行ったが誰もいない。結局バスなんか利用するのは私のみだった。

着いた「まちの湯」は湖岸に立地したガラス張りの建物でいかにも見晴らしがよさそう(写真)。更衣室も風呂も木とコンクリートのすっきりしたデザインで気 分が良い。だが湯船は宣伝の写真から受けた印象に反して意外に小さく、ちょっとがっかり。でも全体に「共同浴場も変わった!」と私は感じ入ったが、後で話 した地元のおばあさんは「情緒がないわ。昔の湯がよかった」と嘆いていた。万人を満足させるのは難しい。でもこのデザイン風呂はフランス人にもうけそうだ。
「湯水のごとく」とはよく言ったもので、お湯は熱い湯から温い湯に至り、湖岸側の窓際に溢れ出る。「日本は資源のない国」と子供の頃から刷り込まれてきた が、何故このほぼ無尽蔵な熱エネルギーを温泉以外に使えないのか不思議だ。「タービン回して電気を作る」ことに固執しすぎだと私は思うのだが。

さて風呂を出てバスまでまた1時間、ここまできて何故イタリアンとは思ったが、安直に眺めのよい2階のレストランで食事をすることにした。白山方面の山はもう雪を冠している。ヌーヴェルキュイジーヌさながらの華奢な前菜のあと、きれいに蟹をあしらえたパスタがでてきたが、これが結構硬め。実は木曜日に京都東山のSODOHという、日本画竹内栖鳳の邸宅をレストランにしたイタリアンを食べたのだが、ここのパスタの「固ゆで」 は私の硬めリミットを超えていた。正直に「硬い」と文句を付けたところ「シェフによるとこの程度が当店のアルデンテですが、柔らかめに作り直しました」とのことで2杯目のパスタがでてきたが、本当に柔らかくなったのかわからないほど微妙で、試されたような???
私は当然何度もイタリアでパスタを食べている。上等なレストランには行ったことがないが、パスタが庶民の食べ物だとしたら日本のシェフの茹で加減に疑問を差し挟む権利は私にもあるはず。日本の常で何処かの大先生に「騙されて」いるのではないかなー?

先のおばあさんは「山中温泉のほうが湯船が広くていいよ」と言っていた。まだ十分行ける時間だがあっさり次回に繰越し。前回展示入替え中で入れなかった金沢の21世紀美術館も念中にあったが、上りの特急が来たのであっさり名古屋に戻ることにした。これがJRパスを使った贅沢なピンポイント観光のピンポイントたる所以なのだ。