坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

チュニジア革命とフランスのジレンマ

「血湧き肉踊る」というと軽卒の誹りは避けられないが、先週からのチュニジアの様子をニュースで見ているとそう言いたくなる。昔のフィリピン、もっと近くはルーマニアなど、劇的な場面はTVを通して目にしたが、今回はもっと近い国(フランスから)だし、まがりなりにも近代国家。そしてネット、携帯の最新技術のおかげで情報量が断然に違う。ニュースサイトもこの数時間のニュースでびっしり、ほんとうに刻一刻と歴史が動いていくのが感じられる。いくらサルコジがひどい政治をしていると言え、経済危機や年金問題など、何が正しい政策なのかの判断は自分の能力をはるかに超え、不満を言いつつネオリベラリズムの大流に押し流されて行く、そうした人間(私)には、民衆が命をかけて路上に出ると政権は倒れる、そして言論の自由に命をかける人たちがいるという歴史上の真実を改めて目前に示してもらうだけで倦怠した精神が洗われ、やはり「血湧き肉踊る」。

私のような一市民は絶対悪の独裁制に立ち上がる市民をすぐに応援するわけだが、それに反しフランス政府は見事な立ち往生を見せた。仏政府はチュニジアアルジェリア、モロッコなどの旧植民地国とは特別な間柄(それこそサルコジの好きなmes amis 親友)、民主制に問題があっても北アフリカの政情安定が第一でずーっと目をつぶってきた。政権が危うくなったからといって手のひらを返すように批判しては宗主国(?)としての面目がないのだ。この絵に描いたようなジレンマの前に政府は沈黙を守り続け、アメリカ、ヨーロッパに先にベン・アリ批判の先を越されてしまった。それどころかチュニジア国内の動乱に関し唯一沈黙を破った発言が先週の11日アリオ・マリ外務大臣の「フランスにはこうした状況をコントロールできる世界中に知られた保安部隊のノウハウがある。抗議行動が安全になされるような国家協力を提案する」というとんでもない国会答弁だった。体制転覆後の現在、同大臣はこの発言は民衆を守ろうとしたもので故意に歪曲されて伝わっていると主張している。

まだまだ油断を許さぬチュニジア革命の行方、そろそろ8時のニュースなのでこのへんで。