坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

王立ロープ工場の寅次郎

木曜日はロシュフォールへ行った。若きカトリーヌ・ドヌーヴ姉妹が歌い踊る、あの気持ち悪い映画「ロシュフォールの恋人たち」の街で、大西洋岸とばかり思っていたら、湾曲するシャラント河の河口付近だが内陸だった。思い違いの元はここはルイ14世がコルベールに命じて海軍工廠を作らせたからで、今でも木造帆船の伝統技術を保存する試みが行われている。帆船につきものだったロープを作る王立アトリエも再建されて博物館になっているが、ここでアーティスト・レジデンス・プログラムがあり、第一選考に通って面談に呼ばれた。一昨年のスペインの人形劇団と同様、場所は特有でレジデンス期間も2ヶ月と長く「私向け」なのだ。提案書類には本当に漠然としたことしか書かなかったのだが、博物館で今でも使えるロープ造りの機械とか、ロープを使った昔のブイとかを見て超漠然としたアイデアが、完全に実現可能な「住民参加」型の「歴史と今」とを結びつけるプロジェクトに一挙に発展。これは博物館および町の要望にぴったりだし、私の人間性あるいは無名性が問われない限りもう決まったようなものと思い、また来るのだからとろくに観光もせず早い列車に予定を変えてパリに戻って来たが、昨日電話でダメ通知。あんまりアイデアが良いと「私でなかったら(言葉巧みフランス人アーティストなら)通ったかも」とめげるんだよねー。「最後の二人の一人」と言われても何の気休めにもならない。選ばれたのは写真家とのことなので、結局は最終着地が確実な方をかったのだと思う。それに私のアイデアは良すぎて私がいなくてもできる、だから「博物館の企画として将来使ってもらっていいから」と捨て台詞のように言ってしまったが、これはまったく捨て台詞ではなくて本当の気持ち。だって私が企画を温存しても「王立ロープ工場」の機械とノウハウを使ってしかできない企画なのだから他に提案しようがない。
(また来るからと思い写真もありません。徹底した馬鹿ですよね~。昨日は早くからふて寝したので今朝は5時に起きて、このブログを書いて落胆をぬぐい去り、そして新しい日を、、、)良い夢見たけど結局話が決まらなかったから出費のみが残った。無情な社会ですアートも。