坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

イーストウッドの見られない映画

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12月中旬からシネマテックでクリント・イーストウッドの特集をしている。年末に硫黄島星条旗を揚げて期せずして英雄となり軍費費招集ツアーに参加させられた兵士の話の「父親たちの星条旗」を見て結構良かったので、フランスのマスコミでは代表作とされている「マジソンの橋」を昨晩見たのだが、全く予想通りの展開のメロドラマでがっかり。「お前はほんとうに人を愛した事がないからわからないのだ」と言われればそれまでの感動ラブストーリー、でもそれならば子供が遺書を読むという構成は不要で、登場人物2人だけのラブストーリーだけでぶつければいい。最後に子供が感動してハッピーになるところなど、観客に同感を強いるようで私は失笑。そういえば封切り時に名作と評判が高くて見に行った「ミリオンダラーベービー」も女性ボクサーが死ぬところまでが行く完全なるお涙ちょうだいの超駄作だった、それ以降彼の映画はいつも評判が高いが見に行かなかった(「星条旗」は「ミリオン」の次だった)が、偶然一昨年飛行機の中で見た「ミスティックリバー」が登場人物が全員善でも悪でもないなかなか良い映画だったので、ちょっと見直したのが間違え(?)のもとだった。イーストウッドはウエスタンをやめて映画監督デビューをした頃には、「ホンキートンクマン」とか今までの彼の役のイメージではない「負け組ヒーロー?」が主人公の、ほのぼのとした(今ほど無理に人を感動させない)良い映画を撮ったと思うし、近作でも上で褒めた映画のような例もあるので悪い監督ではないが、何れにせよ「やりすぎ」が多い。アメリカ映画だから致し方ないのかもしれないが、フランスでも人気があるのが不思議。

ところで皆さん、「ペンチャーワゴン」(Paint Your Wagon)というイーストウッドが出演したミュージカル映画を知っていますか? 主演はリー・マーヴィン。つまり歌など歌いそうもない2人が少し歌う。ゴールドラッシュ時代に砂金採りが、砂金で賭けが行われる西部のカジノに目をつけ、カジノの下に地下道を掘って床下に落ちてくる砂金を集めて大もうけをする荒唐無稽な痛快喜劇。多分中学の頃に見て腹を抱えて笑ったからからもう一度見たいのだが、如何せん、どんなイーストウッド特集でも絶対に上映されない。記憶違いでもあるまいしと思ってウィキペディアを見たらパラマウントの財政を傾けた大予算の大赤字映画だったそうだ(かつ女性役はゴダールの「勝手にしやがれ」のジェーン・シーベルグだったことを発見! しかしこの主役3人のキャスティングは何なんだろう?)。イーストウッド自身の言では「膨大な制作費を浪費した愚作」とのことで、、、私には今でも覚えているシーンがあるぐらい記憶に刻まれた映画なのだが、、、。