坂田英三 旧ブログ

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展覧会案内 リンゴの起源

イメージ 1大展覧会ではグランパレの近代絵画の大パトロン、スタインstein家のコレクションの展覧会も見た。今更セザンヌマチスピカソねーと思ったが、やはり見甲斐はあった。だがこの大展覧会は日本語でも幾つも記事があるだろうから、私のブログならではの誰も知らない展覧会を紹介しよう。

カザフスタンの中国との国境近く、夏は40°冬は零下40°となる厳しい環境の天山山脈に30mに及ぶリンゴの大木のある森がある。1929年ロシアの生物学者Nikolai Vavilovはこのバラエティー豊かなリンゴの森を見つけ、この種Malus sierversiiが世界のリンゴの起源であるとの仮説を立てた。しかし遺伝学は「ブルジョア学問」とスターリンに烙印を押され、彼は1943年牢獄で死亡する。彼の仮説を信じたカザフ人の農学者Aymak Djangalievは一生をMalus sierversiiの保護に捧げ、個人で森のリンゴの調査を実施。スターリン森林伐採に反対し、何度も収容所に入れられそうになった。ソ連崩壊後の1989年にオックスフォードの分子生物学者チームがMalus sierversiiをリンゴの起源と証明。2010年にはリンゴのゲノムは完全解読され、それが揺るぎないものとなったが、Djangalievはそれを待たずその1年前に亡くなった。
この感動的(と私は思う)リンゴの森の写真を展示した、ごく小さな展覧会がベルシー公園Parc de Bercyの旧ワイン貯蔵所(Chai)にて開催中。