坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

遥かなるムンク

ポンピドーセンターで先月末からムンク展が始まった。私は好みの幅が狭いのか、何かまたは誰かの「無条件」なファンにはなれない性格だが、ムンクは昔からいつでも、絵でも版画でも、初期でも晩年の作品でも心動かされる数少ない作家だ。センターのサイトの案内ビデオを見ただけでも片思いの恋人の声でも聞くように心が千々に乱れてしまう。
そんなムンク展に昨日出かけたのだが、地上階の切符売り場が長蛇の列。ポンピドーはシステムが悪く、切符売り場で列をなした上、特別展覧会場前でまた列をなさねばならない。インフォメーションによると上では30分待ちとか。
私は人生もう片思いは沢山だからすぐに諦め、無為にマレ地区を歩いていると「うちのおばさんはすごい」(マ・タント・エ・エパタント)という私でもすぐ分かる語呂合わせの妙な名前の展覧会の幟が眼に入った。無料と書いてあるのでそのまま入ったら、何と抵当貸し、つまり質屋形式の信用金庫の歴史(1637年開業)。「質」というとかっこ悪いから「おばさん」と言うのだ。しかし高利貸しではなくて貧民救済機関として絶対王政から革命を越え現在まで生き残ったらしい。歴史の専門家でもないので展示会は面白くもなかったが、確かに今でもその建物ではこの「歴史的な業務」をしていて、何人もの人が順番を待っていた。こんな観光通りにこんな事務所があったとは!
アトリエに戻って隣人と話したら、ポンピドー年会員になれば列をなさなくても入れそうな事を言う。早速今朝電話してみたら「安全上入場者数制限があるからそれはだめ」とのこと。あーあ、と嘆いていたら、「来週からは草間弥生が始まるし、今年はリヒター、それにマチスまでありますよ」と熱心に勧誘された。水玉ばあさんが始まるとムンク展は余計込むのだろうか空くのだろうか? 考えるだけで頭が穴空きチーズのようになってくる。草間弥生も初期はすごく面白いから、やっぱり年間会員になって、閉館間際に何回もムンク通いというのが手かなー?