坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

バルザックの家のルイーズ・ブルジョワ

朝は零下、日中も3度ほどの真冬に戻り、電話勧誘の任意保険のことなんて考えるともう病気になってしまいそう。気がめいるしアトリエも寒いので我が家からは遠い16区のバルザックの家のルイーズ・ブルジョワの展覧会を見に行った。ルイーズ・ブルジョワ(Louise Bourgeois)は昨年5/31に98歳で亡くなったので、これは彼女が欲した最後の個展と言える。というのもバルザックの小説の主人公ウジェニー・グランデ(Eugenie Grandet)を題材とした作品をバルザックの家(バルザックの実際の書斎を残した記念館)という小さな私的といえる空間で展示することを望んだのは彼女自身だったから。父親がお妾さんを家に住まわせたことが幼い頃のトラウマとなり、それが創造の源となったルイーズ・ブルジョワにとってウジェニーは父親のせいで自己実現、開花が不可能になった女性の典型で、「自分はウジェニーだ」と言っていた(それが今回の展覧会のタイトル)。大きなデッサンなんかもあったが、私の目からは今回のメインは小さな部屋に並べられた、薄幸の女性が孤独にひたすら時間を潰したことを物語る刺繍デッサン。たわいもないような単純な作品だが、見ていてちょっと胸がきゅんとなるところがルイーズ・ブルジョワのすごいところ。彼女自身自分の作品は心の傷の治療と認めているが、その悲しい傷が文字通り可笑しい(ユーモアのある)表現となるのに満足というようなことが壁の説明に書いてあった。
と以上偉そうに書きましたが、私はこの展覧会のことを言われた時「ウジェニー・グランデって誰?」と無教養を暴露した。ちょっとやばかったかなと実は図書館に行って借りてきたところ。

(私とルイーズ・ブルジョワとの因縁は2008/4/30をご参考に)

この展覧会は今週末まで