坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

千載一遇のチャンス

朝突然やってきた「物見の塔」の勧誘を追い返したと思ったら、すぐまた扉のベルが鳴った。出て行くと同建物内に住む画家と坊主頭の大男が立っている。坊主頭のムッシュはベルリンの画廊主だそうで、私が扉に貼ってある本のポスターを見てそれを見たいと言う。最初は扉口で本を見せていたが、話が長くなって来たので、ちらっかりっぱなしで洗濯物まで干してあったが中に入ってもらった。
結構「雨の絵」が気に入ってくれたらしくて「いくらか」という。画廊価格を答えると、「何枚あるか」との質問。「知らない」というと「すぐ数えろ」と言われた。面倒なので作品の入れてある箱を見せて目分量で、キャンバスは50枚、紙のは200-250枚ぐらいだろうと答えると、「このままでの値段はいくらか」と新たな質問。即座に意味がわからなかったが、この人は全部買い取りたいようなのだ。そう言われても注文されてかける絵ではないので「画廊価格の半額からあまり下がらないよー」と気のない返事をしてしまった。

阿呆かと思われそうだが、作品はキロいくらのジャガイモではないのだ。ジャガイモを客が煮ようが焼こうが八百屋は気にしないかもしれないが、「雨の絵」のようにコンセプチュエルな作品はどういう風に紹介(展示)されるかに、一応作家の権利が及ばないと困るのだ(例えば08年は衛星写真と一緒に額装した)。料理法を気にするお百姓がいても私はおかしくないと思うぐらいだから、それはなおさらだ。
しかし何百枚も「雨の絵」を買ってどうするのだろう?
こんなことは生まれて始めて、将来もう二度とないかもしれない。

かくして英三は千載一遇のチャンスを逃した。