坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

フランドルとカタロニア

ゲントのアートフェアにならんで、売れるつもりで空振りだったのは大昔のバルセロナの個展。オープニングには100人を優に越す人で賑わって作品も好評だったが売上げゼロ。その頃毎年のように行っていたアートセンターのボスと後日話したら「それは当然、ここではカタロニア人の作家しか買わんよ」と。
カタロニアはスペインの中で自らの言語を持ち、民族意識が強く昔から独立運動が盛ん。経済的にもスペインの他の地域に先んじている。その頃ヨーロッパ統合の夢がフランスよりよほど熱く語られていた。スペインという一国を越えてヨーロッパ連合の一角となるという理念だ。こうしたことから概してヨーロッパ各国の少数派民族はヨーロッパ連合を支持する。
ベルギーはワロニーと呼ばれるフランス語圏とフランドル語のフランドル地方に別れる。マイナーと思われるフランドル地方だが、カタロニアと違って人口でも多数派(60%)、かつ昔は炭坑のある南部のワロニーが産業の中心だったが、今ではアントワープに代表される北部フランドルが経済を牽引するようになった。穏健化したカタロニアに比べ、最近はフランドル民族主義の過熱が懸念されている(今週ベルギー国営TVで、もしフランドルが独立したらという番組があって物議をかもしたそうである)。
と前置きが長くなったが、ゲントはフランドル。ブリュッセルの外国人が経営する画廊の日本人アーティストに財布を開かないのはひょっとしたら当たり前かも知れない。そう思うと売りに行ったのは大間違えで、展示することだけに意義がある。偏狭なる精神に対抗せねばならないのだから。