坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

青の見えないギリシャ人

ギリシャ人は青が見えなかったと言ったらびっくりするよね。19世紀末の歴史学者に真面目にそういう議論をしたらしい。というのは古代ギリシャ語の文献に「青色」の記述がない、というか青を表す単語自体が存在しなかった。例えばホメロスの叙述などを研究すると、色が濃いとか中間色とかの表現はされるが、現代流の「色」はない。だから「水の色」と「目の色」と「蜂蜜の色」が同じ形容詞で表現された(キラキラ光っているということか?)。
あまり考えたことはないだろうが、色はれっきとした「抽象概念」。例えば日本語でも赤、青という単語と、橙色、灰色とは全く概念レベルが違う。後者は、果物、物質を引き合いにだして定義されているが、赤、青はそれ自体が「あるカテゴリー」を意味しているでしょ!だから長い人類史の産物なのです。ところが19世紀には「人間が進化したから青が見えるようになった」とした進歩主義者もいたそうで、この方がよっぽど盲目だね。(以上ほぼ、2000年に出版されて評判になったMichel Pastoureau著"bleu"の受け売り)

僕は23年もフランスにいるのにギリシャへ行ったことがない。いわば憧れの国でして(特に今年の冬のように曇天が何ヶ月も続いたあとは格別)、イメージでは真っ青の真っ青の海。それがあまりにもあり過ぎるとあまりにも陳腐で形容詞も必要もなくなってしまうということか。こりゃ「猫に小判」状態だ。実は知合いにギリシャで「雨の絵」の展覧会ができないか探りを入れてもらっていたのだが、僕の雨の絵(知らない人は英語サイトの rain painting を見て!日本語解説もあり)は青いから駄目そうな気がしてきた。かえって砂漠地帯、サウジアラビアなんかの方が受けるかもね。あそこなら恵みの雨でぐっとお高い値段でも売れそうな、、、(また貧乏アーティスト性がでた)