坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

ジャック・タチ

真冬に季節外れのジャック・タチの「ユロ氏のバカンス」を見る(1950年代の古典です)。ジャック・タチはなんだか日本人の肌に合わない部類のフランス喜劇映画の創始者と言える。コミカルなハプニングの連続が売りなのだが、何かのんびりとしてブルジョア的で、社会風刺はオブラートに包まれ、英米系の喜劇映画に比べるとスッキリとしない。見ていてどちらかというと映画としての構成の上手さとかに関心がいってしまう。つまりマルクス・ブラザーズとか吉本新喜劇とかの民衆的(ある種暴力的)パワーで圧倒するという「泥臭さ」の対極点にある。知的と取れないこともないが、基本はドタバタ劇だし、結局言葉を重ねてもこの捕らえきれぬ不思議さは言い表せない。このジャック・タチとのユーモア感覚とのギャップは新しいフランス喜劇映画をみても感じることがあるから、フランス人の民族性に深く根付いているようだ。フランス人はタチが好き。ジャック・タチ理解せずしてフランス人の理解は不可?明日はこの映画のスクリプトをした女性が講演する。タチの霧が少しは晴れるか、謎がますます深まるか?