坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

地獄の穴でのヒルシュホーン

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カンヤの北、約20kmのところにティエールという刃物工業で有名な都市がある。ここの大きなかつての工場跡がアートセンターになり、時代の申し子トーマス・ヒルシュホーン(Hirchhorn 数年前ポンピドーセンターのデュシャン賞受賞)の展覧会を開催中。出版起業家で私のホストであったのP君が駅までおくるついでに連れて行ってくれた。P君は絶賛しており2度もいったとか。凝結というテーマで社会・肉体の病巣が凝固するイメージが増殖的に並ぶ。具体的には戦争の被害者のマスコミには出て来ない頭が半分かけた死骸とかと異物をつけられたマネキンの頭のコンビネーションを何百も陳列した棚とか、何十人もの釘、ビスがささったマネキンとか、、、。おぞましいイメージばかりだが余りの数にすぐ悲しいかな飽和して来る。それがねらいなのかもしれない。非常に網膜的で「ホラー」を超えて心には迫るものがない。でもインパクトは極めて強い。私はこれは視覚メッセージ効率優先の「広告デザイン」の世界だと思った。実際作家はデザイン学校をでている。勿論この意見にP君はまったく同意しなかった。
センターのある場所は日も当らぬ深い谷間で、刃物工労働者は酷い環境で仕事をさせられていたので「地獄の穴」と呼ばれていた。その前を館内の地獄絵を知るか知らぬか、観光汽車が通って行った。