坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

A4版に入ったクレーヴの奥方

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昨日書いた講演会の待ち時間を潰しに何となく入った正面にあった画廊 (galerie satar) で面白いものを見つけた。一見すると点が並んでいるように見える紙、タイトルが「クレーヴの奥方」、その横にある1x2mぐらいの大きな紙の同様な作品のタイトルは「失われた時を求めて」。一体何のことだろうと画廊のお兄さんに訊くと、印刷屋さんの使う特別ルーペを渡された。実は黒点と見えたものはテキスト、ループで読める(つまりすごい印刷精度!)。「クレーヴの奥方」がA4用紙につまり、あのプルーストの大作が大きいとはいえ紙一枚に収まるとは全く想像外。でも何故「クレーヴの奥方」か尋ねたところ、サルコジが大統領就任前の06年(当時内務大臣)に「公務員試験内容に『クレーヴの奥方』があるなんてナンセンス。役所の窓口でそれが何の役に立つのか」という意味の暴言を吐いたのに触発された作品とか(ちなみに同書はフランス文学史上心理描写をした初の作品とされる)。サインなしの普及版は写真のようなループ入りで20ユーロ。すぐ買いました。
イデアだけのつまらない作品に思えるかもしれませんが、ループで見ていると文字が波打つ海のようにも見えて不思議な世界にも導かれます。Art Brutの画廊に飾られていた作品よりこちらに感動してしまったのは「現代アート」に心が毒されている証拠かしら? でもこんな痛快でかつ共感できる歴史性(私の生きてるスパンなので)のある作品は珍しい。(作家はCOLLECTIF ANONYME匿名集団というグループ www.collectifanonyme.com)