坂田英三 旧ブログ

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ルーブルでのトニー・クラッグ講演会

先週の金曜の晩、現在ルーブル美術館で作品を展示中のイギリス人現代彫刻家トニー・クラッグのインタビュー映画を見に行ったつもりだったら、ルーブル地下のAVホールに本人がでてきてびっくり(その割には聴衆が少なかった)。前半は彼がユーモアを交えて生い立ちを語ったが、そのうち現代美術史みたいになってきてちょっとうんざり(いずれにせよ、私が言うのは何だが、すごい英語訛りの仏語講演で実はあんまりわからなかった)。その後美術評論家との対話は英語でぐっと理解が高まったが、調子に乗って同時通訳を聞かなかったのでいい加減な理解で終ってしまったが、まあ御報告。

トニー・クラッグ(Tony Cragg)は70年代末にテームズ河畔で拾い集めたゴミのプラスチックを壁に張って英国地図とか人物像を作り、あっという間にスターとなった。80年初頭はイギリスの若い彫刻家ですごい人が何人も出て来て、その頃私はその一人のリチャード・デーコンの方が造形性がよっぽどオリジナルでクラッグの作品より面白かったが、その後彼は流木をただ積み上げたとか、壜や壷をくっつけ合わしたものとか、どんどん新しいものを作って行って私は彼の作品が好きになった。でも90年代になり粘土に戻り、陶器をぐにゃっ、ぐるりと複雑に変形させた形の彫刻を作るようになる。講演の話によると「80年代は展覧会が一杯あって、その場に行って寄せ集めた素材で何か作りインスタレーション的な仕事をし、すごく良い時もあれば、まあまあかという時もあり、その後でじっくり形をアトリエでつくる仕事がしたくなった」とか。(独白:私の今の状態はそれ以前か。だから超売れっ子になると私も心境の変化があるかも? でも彼の仕事は画廊、美術館内展示だったから性格が違うか?) つまり「以前はマルセル・デュシャン以降の彫刻の『いかに既存する物をそれが持つ意味とずらした形でアレンジするか』という路線(独白2:これは私の言う「規則違反」(12/3)で、「売れる現代アート」の定石)を行っていた」、彼はそれを超えて形自体に戻ろうとしたようだ。「自分は手を使って素材との対話をしていて、コンセプチュエルではない」と何度も繰り返した。それに対し現在のモニュメンタルな彫刻は自分の手で作れるものではないが、どう考えているのかという質問への答えは技術論に終始し私には説得力がなかった。

ルーブルに展示中の作品は元々ウィーンの美術館の企画で、メッサーシュミットという歪んだ顔の連作を作った彫刻家の作品と関係あるらしいが、こんな戦闘機のような名前の人聞いたことないですねー。

結局展覧会はどうかというと、、、実は講演だけ聴いてまだ見ていない。