坂田英三 旧ブログ

2013年までのブログです

ツァラストゥストラ

今年の夏は実に天気がよい。記憶の限りずっと好天、「雨の絵」も一枚もない。かつ8/15を過ぎても秋めかないのは珍しい。
南仏は40度を越す暑さだそうだが、パリは好天と言っても少し雲がかかっているし、車も少ないし、快適だ。かつ私には自然冷房の地下アトリエという別天地がある。とはいえ少しは暑いからYesを聴く(1970年頃に流行ったプログレッシブ・ロックバンド)。私が好きで持っているのは「危機」(? : 原題はClose to the edge)というアルバムだけなのだが、山に登っているか海に潜っているか、あるいは冒険映画でも見ているかのような爽快感がある。音楽としては緻密にできていると思うが、単純に気分高揚。訳もわからないまま「ツァラストゥストラ」を読み飛ばすような高揚感。

ミッシェル・オンフレの哲学講座もついにニーチェに到って、彼が冒頭の駱駝→獅子→子供のメタモルフォーズの章を読み上げたが、やっぱりよくわからないから講議の後で日本語訳を取り出した。だがやっぱりわからない。でも印象に残るのは、外からの命令ではなく自ら欲することにめざめた獅子が子供にならねばならない理由のキーワードが「ウイ」ということ。手塚富雄訳を引用すると

「小児は無垢である、忘却である。新しい開始、遊戯、おのれの力で回る車輪、始原の運動。「然り」という聖なる発語である」

和訳はやっぱり高尚だ。「然り」は仏語ではただの「ウイ」なのだから。というわけでひょっとしたらYesというグループ名はここから来ているのかもねーと思った次第(グループ名の由来はサイト等で確認できず)。

ミッシェル・オンフレはニーチェ派(?)で、ニーチェになったら自分の庭で余裕なのか、語り口が少しのんびりしてきた。お陰でこちらも料理の余裕ができる。彼の話で知ったのだがマルセル・デュシャンアメリカに渡る時「ツァラストゥストラ」を座右の書として持って行ったそうな。私もそうなんですよ!(それでどうだというわけではありません)自信たっぷりに見える天下のデュシャンも時には高揚剤が必要だったのかなー。(私の場合はわからないので記憶に残らない、つまり何時何処から読んで何処でやめてもかまわないので座右の書なのですが、、、。オンフレ先生もわからなくて当然と言ってくれるので嬉しい)